排卵誘発剤とは

定義

排卵誘発剤とは、卵胞の発育が正常に行われず排卵に問題が起こる場合に、卵胞の発育を促し排卵の確率を高める薬です。

種類

仕組みの違いにより、下記のような種類があります。

1. エストロゲンの生成を抑制することで、脳からのFSH・LHの分泌を促進するもの

アロマターゼ阻害薬(飲み薬)

2. 脳の下垂体に働きかけ、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)の分泌を促進し卵胞成長を促すもの

シクロフェニル、クロミフェンなど(飲み薬)

3. 2により効果が見られない場合や複数の卵胞を成長させたい場合に使用される、FSHと同じ役割をもつもの

FSH製剤やhMG製剤(注射薬/自己注射薬)

副作用

1,2よりも3の方が排卵誘発の作用が強いですが、その分副作用も高くなります。

1. アロマターゼ阻害薬(飲み薬)

まれに下痢・嘔吐などの胃腸症状や、ほてり・頭痛などの症状がでることがあります

2. クロミフェン

長期的に使用すると、子宮内膜の発育が抑制されたり、排卵期の頸管粘液が減少することがあります。これにより妊娠率が下がることもあります1), 2)

3. FSH製剤やhMG製(注射薬)

卵巣が反応しすぎる場合、卵巣が腫れて痛みが出ることがあります。また、卵巣過剰刺激によるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)発症の可能性が飲み薬と比較すると高くなります。また多胎妊娠(二つ以上の受精卵ができること)も他の薬に比べて増加します

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは

普通の排卵では卵胞は1つしか成長しないのですが、FSH製剤やhMG製剤で卵巣を刺激すると卵胞が一度にたくさん成長することが多くなります。
多くの卵胞から様々な物質が放出され、結果として胸水・腹水が体に溜まってしまうことがあり、これがひどくなり症状を起こすと卵巣過剰刺激症候群と呼びます。人によってお薬に対する反応の度合いが異なるため、予防のために医師による使用量や期間の調整が必要となっていきます。また、卵胞の大きさを超音波でモニターしていくことが必要です。

様々な因子が関与しているといわれますが、最も関係の深い原因は、薬剤によりVEGF(血管内皮増殖因子)という物質が増加することだと考えられてます3), 4), 5)

リスクとなる要因は、若年(35歳以下)、やせ型、PCOS、高卵巣予備能(AMHが3.36ng/ml以上)などです4), 6), 7)

もしなってしまった場合には、安静だけで改善する場合もありますが、入院が必要なことがあります。重症の場合は腹痛、呼吸困難の症状を起こしたり、血栓ができてしまうこともあります。

多胎妊娠とは

排卵誘発剤を使って排卵した場合、複数排卵が起こることがあり、結果として多胎妊娠(2つ以上の受精卵ができる→双子以上の赤ちゃんができる)の発生率は高くなることが知られています。双子以上の妊娠は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など母体の合併症リスクに加え、早産や低出生体重児などの新生児合併症のリスクも高くなります8)

参考文献

今日の治療薬2020

生殖医療の必修知識2020

1) Kousta E, White DM, Franks S: Modern use of clomiphene citrate in induction of ovulation. Hum Reprod Update 1997; 3: 359-365

2) 田村博史, 竹谷俊明, 浅田裕美, 山縣芳明, 杉野法広:排卵誘発法. 産婦治療 2011; 102: 535-541

3) Geva E, Jaffe RB: Role of vascular endothelial growth factor in ovarian physiology and pathology. Fertil Steril 2000; 74: 429-438

4) Pellicer A, Albert C, Mercader A, Bonilla Musoles F, Remohi J, Simon C: The pathogenesis of ovarian hyperstimulation syndrome: in vivo studies investigating the role of interleukin-1beta, interleukin-6, and vascular endothelial growth factor. Fertil Steril 1999; 71: 482-489

5) Neulen J, Yan Z, Raczek S, Weindel K, Keck C, Weich HA, Marme D, Breckwoldt M: Human chorionic gonadotropin-dependent expression of vascular endothelial growth factor/vascular permeability factor in human granulosa cells: importance in ovarian hyperstimulation syndrome. JClin Endocrinol Metab 1995; 80: 1967-1971

6) 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告卵巣過剰刺激症候群の管理方針と防止のための留意事項. 日産婦誌 2009; 61: 1138-1145

7) 柴原浩章, 平野由紀, 町田静生, 平嶋周子, 高見澤聡, 鈴木光明:【女性診療科医のための薬物療法マニュアル】婦人科の薬物療法 生殖・不妊・避妊 卵巣過剰刺激症候群. 産婦治療 2003; 86: 667-674

8) American College of Obstetricians and Gynecologists; Society for Maternal-Fetal Medicine. ACOG Practice Bulletin No. 144: Multifetal gestations: twin, triplet, and higher-order multifetal pregnancies. Obstet Gynecol. 2014 May;123(5):1118-32. doi: 10.1097/01.AOG.0000446856.51061.3e. PMID: 24785876.

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