甲状腺機能低下症とは
定義
甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能が異常に衰えることによって引き起こされる病気です1)。甲状腺の主な役割は、甲状腺ホルモンを合成し血中に放出することで全身の代謝を向上させることにあるため2)、
1. 血液中への甲状腺ホルモンの分泌が大きく減少すること
2. 全身の代謝が低下し、身体における重要な機能が著しく低下すること
が甲状腺機能低下症の主な特徴となっています1)。
種類や症状
甲状腺機能低下症は原因となる器官によって大きく2つに分けられます。
1. 甲状腺の異常が原因である原発性甲状腺機能低下症
2. 甲状腺を制御している視床下部の異常が原因である二次性甲状腺機能低下症
症状としては以下のようなものが見られます3)。
- 体重増加や低体温症などの代謝系の症状
- 人格の変化や表情が鈍くなるなどの精神系の症状
- 顔面が腫れたり皮膚が乾燥したりなどの皮膚の症状
- 無月経
原因
原発性の甲状腺機能低下症では甲状腺自体の異常が原因となります。最もよく見られるのは橋本甲状腺炎です。また、甲状腺機能亢進症の患者さんにおいてホルモン産生を下げるために服用したチマゾールやヨードなどの医薬品の副作用で、ホルモン産生が下がりすぎてしまい甲状腺機能低下症となる事例も多く見られます3)。
二次性の甲状腺機能低下症では、脳の特定領域(間脳視床下部)からのTSHの分泌異常が原因となることがほとんどです。TSHは甲状腺ホルモンの合成と分泌の合図になるので、これがないと甲状腺機能低下症になります3)。
関連疾患
橋本甲状腺炎
橋本病は自己免疫疾患の1つです。本来、体内で作られる抗体は病原体をターゲットすることによって体内から排除するように働きます。ところがこの抗体が誤って自身の細胞にターゲットしてしまうのが自己免疫疾患です。橋本甲状腺炎の場合は抗体が甲状腺をターゲットしてしまうことによって、甲状腺において炎症を誘発し破壊します3)。
診断
甲状腺機能低下症の診断では、血中のTSH濃度とT4濃度が用いられます。原発性の甲状腺機能低下症においてはTSHは高く、T4は低い値となっています。一方で二次性の甲状腺機能低下症においてはTSHもT4も低い値となっています3)。
治療法
甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの量が減少しているため、これを薬剤によって補充するのが一般的な治療法となります。L-チロキシンやリオチロニンやこれらが混合されているものがよく用いられます。服用しすぎると逆に甲状腺機能亢進症となるので、血中のTSH濃度が正常な範囲にあることを確認しながら服用することが大事です3), 4), 5)。
参考文献
1) 日本内科学会: 「薬剤による甲状腺障害」99:776~785, 2010
2) J. Jameson: semanticscholar, 2011
3) 高須信行:「橋本病;甲状腺機能低下症の診断と治療,そして可逆性甲状腺機能低下症」日本内科学会雑誌86-7:1147-1155, 1997
4) 日本薬局方: レボチロキシンナトリウム錠 添付文書, 2019
5) 耳鼻咽喉科展望:「甲状腺ホルモン製剤—レボチロキシンナトリウムを中心に—」54:2;118~120, 2011
自宅でできるホルモン検査