人工甲状腺ホルモンとは

仕組み

甲状腺ホルモンは妊娠の維持および子供の成長、さらにはエネルギー代謝に重要なホルモンです1)。この甲状腺ホルモンの分泌異常は、分泌が過剰になる甲状腺機能亢進症と逆に不足する甲状腺機能低下症に大別されます2)。後者の場合、不足した甲状腺ホルモンを人工的に合成したホルモン製剤を服用することで補償し、治療することができます。

種類

甲状腺ホルモンにはT3とT4の二つに大別されます。主に合成されるのはT4の方ですが、こちらはあまり大きな効果を持たないため、主に肝臓などそのほかの器官でT3に変換されます3)。つまり、実際に効果を発揮するのはT3がメインとなります。

1. チラーヂン(レボチロキシンナトリウム水和物) T4製剤4)
2. チロナミン(リオチロニンナトリウム) T3製剤5)

なお、人工甲状腺ホルモンだけではなく、天然の甲状腺ホルモンを精製して服薬する場合もあります3)

効能

人工甲状腺ホルモンは以下の効果を持っているため、甲状線の機能が低下する甲状腺機能低下症や甲状腺のおできである甲状腺腫などに用いられます。4), 5)

1. 体内における酸素消費および基礎代謝を向上させる。6), 7)
2. 生体の成長および発育を促進する。8), 9)
3. 血中のコレステロール濃度を低下させる。10)

副作用

人工甲状腺ホルモンが過剰となってしまうと、甲状腺機能亢進症のような症状が見られることがあります。ただちに服用を停止することで重大な副作用を避けることができますが、長期服用により意識障害を引き起こすこともあります2)。そのほか、以下のような副作用が報告されています4), 5)

1. 狭心症
2. 肝臓の機能障害
3. 低出生体重児や早産児における循環不全

これらの副作用の重症化を防ぐため、異変を感じたらかかりつけの医師に素早く相談することが重要です。

禁忌

甲状腺ホルモンは体内の基礎代謝を向上させるため、心臓への負荷が高まることになります。そのため、心筋梗塞などの症状を発症して十分な期間が経つまでは、人工甲状腺ホルモンを服用しないことがあります。また、人工甲状腺ホルモンの吸収を妨げるような薬剤の併用も避けなければいけません。そのような薬剤には、貧血の薬である鉄剤や血中コレステロール濃度を低下させる医薬品、さらにはめまいの薬などのアルミニウムを用いた薬などが含まれます3)

参考文献

1) J. Jameson: semanticscholar, 2011

2) 日本内科学会: 「薬剤による甲状腺障害」99:776~785, 2010

3) 耳鼻咽喉科展望:「甲状腺ホルモン製剤—レボチロキシンナトリウムを中心に—」54:2;118~120, 2011

4) 日本薬局方: レボチロキシンナトリウム錠 添付文書, 2019

5) 日本薬局方: チロナミン錠 添付文書, 2019

6) Burack, R. et al.: J. Pharmacol. Exptl. Therap.,176:212, 1971

7) Hart, F. D. et al.: Brit. Med. J., 1 : 512, 1950

8) Hsieh, A. C. L.: J. Endocrinol., 26 : 55, 1963

9) Tapp, E.: J. Bone & Joint Surg., 48 : 526, 1966

10) Hart, F. D. et al.: Brit. Med. J., 1 : 512, 1950

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