PMSとは
定義
PMS(Premenstrual Syndrome)は月経前症候群のことであり、日本産科婦人科学会では「月経前、3〜10日の黄体期のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」と定義されています1)。
種類や症状
PMSでは身体面と精神面それぞれに症状が現れます。
乳房の痛み、お腹の張り・腰痛、頭痛、手足のむくみ など
うつっぽい・落ち込みやすい(抑うつ気分)、何となく不安になる、いらいらする、怒りっぽい、混乱して勉強や家事などが手につかなくなる、引きこもりたくなる など
また、特に精神面での症状が重い場合はPMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder:月経前不快気分症候群)と呼ばれています2), 3)。PMDDでなくとも、日常生活に大きな支障をきたす場合には対策を取りましょう。
原因
PMSの明確な原因はまだ明らかにされていませんが、統計的なデータから、エストロゲンなどの女性ホルモンバランスの乱れ、セロトニンと呼ばれる脳内神経伝達物質の欠乏、マグネシウムやカルシウム等のミネラル不足などが原因であると考えられています2), 3)。
診断
妊娠可能年齢の女性のうち半数ほどはPMSを発症し、その中の1割ほどの女性はより重症のPMDDを発症していると考えられています2), 3), 4)。
上記の症状が月経前の5日間の間に少なくとも1つ、月経3周期にわたって発生しており、日常生活に障害が生じている場合にPMSと診断されます。PMDDを診断する際には、PMS同様の症状(特に精神的な症状)の詳細や重さの程度を確認します5)。
治療法・対処法
下記のような対処方法が挙げられます。まずはライフスタイルの改善が勧められますが、症状が重い場合には薬による治療が行われます6)。
1. 精神的・心理的ストレスを減らす
カウンセリングを受ける、メディテーションをする、リラックスできることを行う(アロマ、マッサージなど)6), 7)。
2. 食生活を変える
カフェイン・塩分・アルコールの摂取を控える、炭水化物を増やす
3. 運動をする
ヨガ・ピラティスなどの呼吸を整える効果も持つ運動などを行う
4. 身体面での症状を和らげる薬による治療
むくみをとる利尿薬、痛み止め
うつ病の薬(SSRI):低めの用量で用いられます。欧米ではよく使われていますが日本では保険適用外となっています7), 8)。
5. 精神的症状を和らげる薬による治療
うつ病の薬(SSRI)など
6. 漢方薬
体質や主な症状に応じて、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散など
7. 手術
最も重症かつ薬剤による治療に反応しない場合の最終手段として卵巣を摘出することで症状を改善できることもありますが、ホルモンの補充療法が必要となります。
参考文献
1) 日本産科婦人科学会(編). 産科婦人科用語集・用語解説集. 東京:金原出版, 2008;157
2) The American College of Obstetricians and Gyncologists. ACOG practice bulletin No.15. Premenstrual syndrome. Obstet Gynecol 2000;95:1-9
3) Johnson SR. Premenstrual syndrome, premenstrual dysphoric disorder, and beyond:a clinical primer for practitioners. Obstet Gynecol 2004;104:845-859
4) 鎌田泰彦, 平松祐司. 月経前症候群の診断と治療. 産婦人科治療 2009;98 増刊:176-182
5) American Psychiatric Association. Premenstrual dysphoric disorder. In Diagnostic and statistical manual of mental disorders: DSM-5. 5th ed. Washington. DC: American Psychiatric Publish-ing; 2013. pp171-175.
6) Johnson SR. Premenstrual syndrome, premenstrual dysphoric disorder, and beyond: a clinical primer for practitioners. Obstet Gynecol. 2004;104:845-859.
ROCG Green-top Guideline BJOG 2016; No.48 DOI: 10.1111/1471-0528.14260.
7) Majoribanks J et.al: Cochrane Database syst Rev 2013;6CD001396 PMID: 237744611
8) Kornstein SG, et al. : J Clin Psychiatry 2006; 677:1624-1632 PMID:17107257
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