抗甲状腺薬とは

仕組み

甲状腺ホルモンは妊娠の維持および子供の成長、さらにはエネルギー代謝に重要なホルモンです1)。バセドウ病などの疾患では、体が甲状腺を異常に刺激する抗体をたくさん産生することによって甲状腺ホルモンを過剰に分泌させます2)。過剰なホルモン産生は高血圧や不整脈を引き起こすため、治療の必要があります。抗甲状腺薬は、この甲状腺ホルモンの合成を阻害することによって、血中の甲状腺ホルモン濃度を正常な値まで低下させ病気の治療に貢献します3)

種類

抗甲状腺薬には以下の2種類があります。

1. メルカゾール(チアマゾール)4)
2. プロパジール/チウラジール(プロピルチオウラシル) 5), 6)

これら2種類は効果や副作用などの面で大きな差はありません。しかし、メルカゾールは乳汁への分泌がやや多いため授乳を通じ乳児の体内に入ってしまいます。そのため授乳中の母親にはプロパジールやチウラジールの方を処方することが一般的に好まれています7)

効能

抗甲状腺薬は以下の効果をもつため、甲状腺の機能が異常に促進される病気(例えばバセドウ病や甲状腺炎など)の治療に用いられます4), 5), 6), 7)

1. 甲状腺ホルモンの体内における合成量を低下させる8)
2. 甲状腺ホルモンの材料となるヨードの尿中排泄を増加させる9)
3. 体内の酸素消費量を抑え、体温の異常上昇を抑制する10)

副作用

抗甲状腺薬を服用した際に最もよく見られる副作用は、発疹と痒みです。通常は花粉症などの薬としても用いられる抗ヒスタミン薬を用いることで副作用を軽減します。一方頻度は高くないものの最も注意すべき副作用は白血球減少症をはじめとする血液の病気です。私たちの体の中で白血球は免疫機能を担う細胞であるため、その数が減少すると免疫機能が低下してしまいます4), 5), 6)

禁忌

抗甲状腺治療薬は幅広い患者さんにお使いいただけます。ただし、抗甲状腺治療薬を過去に服用した際に重篤なアレルギーのような症状を発した経験のある方は使用できません。そのような症状には上記の副作用のほか、肝臓の機能障害や後天性の糖尿病、関節炎などがあります4), 5), 6)。抗甲状腺薬は長期にわたって服薬するため、服薬中に異変を感じた場合は素早く医師に相談しましょう。

参考文献

1) J. Jameson: semanticscholar, 2011

2) Adams DD and HD Purves: Abnormal responses in the assay of thyrotrophin. Proc Univ Orago Med Sch 34: 11, 1956.

3) Pinchera A, P Liberti, E Martino, GF Fenzi, L Grasso, L Rovis and L Baschieri: Effects of antithyroid therapy on the long - acting thyroid
stimulator and the antithyroglobulin antibodies. J Clin Endocr Metab 29: 231, 1969.

4) 日本薬局方: メルカゾール錠 添付文書, 2020

5) 日本薬局方: プロパジール錠 添付文書, 2015

6) 日本薬局方: チウラジール錠 添付文書, 2017

7) 江本直也: J Nippon Med Sch 2000;67(1)

8) Richards, J. B. et al.: Endocrinol. 1959;65:198-207

9) 塩川喜之: 日本内分泌学会雑誌, 40(1):34(1964)

10) Meredith, J. H. et al.: Surg. Forum, 12:5(1961)

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